コウノです。
銀座の地下に佇む白い空間が、日本の現代美術史に刻む足跡は計り知れない。1919年の創設から100年余り、資生堂ギャラリー1は単なる展示空間を超え、時代の最先端を行く美的感性の発信地として、無数のアーティストの才能を世に送り出してきた。現在開催中の「髙田安規子・政子 Perspectives この世界の捉え方」展を通じて、この稀有なギャラリーの魅力的な秘密を探ってみよう。
1. 日本最古のギャラリーに刻まれた美の系譜
創設者の理想と現実への挑戦
資生堂ギャラリー1の物語は、1919年12月13日、初代社長の息子である福原信三が化粧品部の2階に「陳列場」を開設したことから始まる。この決断の背景には、「作品を発表する機会に恵まれなかった当時の若手芸術家たちに無償で会場を提供したい」という純粋な想いがあった資生堂ギャラリー1。
福原信三は写真家でもあり、「ものごとはすべてリッチでなければならない」という理念のもと、美への感性や心の豊かさを資生堂の価値創造の基本精神として掲げたcorp.shiseido.com2。この哲学は現在も脈々と受け継がれ、企業文化の根幹を成している。
困難を乗り越えた不屈の歩み
ギャラリーの歩みは決して平坦ではなかった。1923年の関東大震災で建物は被災したが、焼け残りの外壁を利用したバラックギャラリーで即座に活動を再開した資生堂ギャラリー1。1928年には前田健二郎設計の新館2階に本格ギャラリースペースを設置し、戦時中も約270回の展覧会を開催し続けた。
1973年の資生堂ザ・ギンザビル建設のため一時取り壊されたが、2001年に現在の地下1階にリニューアルオープン。天井高5メートル超という銀座地区最大級の空間で、インスタレーションから映像作品まで多様な表現を可能にしている資生堂ギャラリー1。
現代美術への戦略的転換
1990年代からは現代美術に主軸を定め、前衛性と純粋性を兼ね備えた同時代の表現を積極的に紹介する方針に転換した資生堂ギャラリー1。この転換期に企業文化部が設置され、ギャラリー運営の方針について徹底した見直しが図られたアートの支援者たち:資生堂3。
これまでに資生堂ギャラリー4をデビューの場として、日本美術史に大きな足跡を残した作家は数知れない。現在までに3,100を超える展覧会を開催し、その多くが日本のアートシーンに影響力を与えてきた資生堂ギャラリー:銀座の現代アートの拠点5。
2. アートと科学の融合が生み出す新次元の体験
現在の注目展示:双子アーティストの世界観
現在開催中の「髙田安規子・政子 Perspectives この世界の捉え方6」展(2025年8月26日(火)から12月7日(日)まで)は、一卵性双子のアーティストユニットによる個展だ。彼女たちの作品は数学や物理学的概念を芸術表現に昇華させ、空間と時間の「スケール」をテーマとした独創的な世界観を提示している資生堂ギャラリー6。
髙田安規子・政子は身近な素材を用い、数学や物理学的アイデアを背景に繊細な手仕事や緻密な構成で作品を生み出し、アートと科学を融合させた独自の感性により表現する資生堂ギャラリー6。

主要作品の詳細解析
《Strata》 – 展示の中心となる新作は、約500冊の書籍と鉱石・化石を巧妙に配置し、生物誕生から人新世に至る壮大な時間軸を視覚化した「知の地層」として観る者を圧倒する資生堂ギャラリー6。本が床から踊り場まで連続し、時間と知識の層を視覚的に表現している。

《Timepiece》 – 同じく新作のこの作品では、割れた砂時計から溢れ出た砂・石・岩が時間の不可逆性と生命の継承を詩的に表現している資生堂ギャラリー6。時間の概念について考えさせると同時に、受け継がれていく生命、あるいは生命の終焉を想起させる。
《Can’t see the forest for the leaves》 – 自然界に広くみられる**フラクタル形態を用いて自然の摂理における「個」と「全体」**について言及した作品資生堂ギャラリー6。
《Spectrum》 – すべての生命の源となる光をテーマにした作品で、光が全ての生命の根源であることを表現している資生堂ギャラリー6。
これらの作品群は、資生堂の理念である**「アート&サイエンス」の融合を体現した現代美術の新境地と言えるcorp.shiseido.com2。新作と過去の作品を再構成したものを中心に約20点**が展示され、全体として自然法則と宇宙スケールを芸術的に体感できる点が最大の魅力となっている。
3. 若手作家の登竜門「shiseido art egg」の発見力
公募プログラムの革新性
資生堂ギャラリーの影響力を語る上で欠かせないのが、2006年から始まった公募プログラム「shiseido art egg7」である。毎年約300件の応募から3名を選抜し、それぞれに約1ヶ月間の個展開催機会を提供するこの取り組みは、新進アーティストの発掘・育成において大きな社会的価値を創造してきた。
このプログラムは「瑞々しい新進アーティストによる「新しい美の発見と創造」を応援する」ものとして設計され資生堂ギャラリー8、独自の視点で今日の世界を見つめ、時代が抱える不安や困難に真摯に向き合い、そこから新しい価値観や美意識を表現しているかが審査のポイントとなっている資生堂ギャラリー9。
第18回の注目アーティストたち
第18回となる2025年は、291件の応募から選ばれた大東忍、すずえり(鈴木英倫子)、平田尚也がそれぞれ個展を開催予定だ資生堂ギャラリー10。各作家は2025年3月~6月(仮)に資生堂ギャラリーにて個展を開催する。
育成システムの充実
shiseido art egg7は、公募入選審査の際だけでなく、個展開催後のart egg賞選出の際にも審査員からのレビューを受けることができる。また、資生堂ギャラリーの学芸員によるきめ細かなサポートと、美術界の第一線で活躍する審査員からの直接指導は、若手アーティストにとって貴重な成長機会となっている。
これまでの入選者の多くが、その後日本の現代美術界で重要な存在となっていることが、このプログラムの質の高さを物語る。例えば、2024年の第17回ではアーティスト林田真季、野村在、岩崎宏俊の3名がそれぞれ個展を開催し、野村在が「生と死」を追求した作品で第17回shiseido art egg賞を受賞したniewmedia.com11。
4. 企業メセナの模範として評価される文化貢献
数々の栄誉に輝く実績
資生堂ギャラリー12の活動は、企業による芸術文化支援の分野で数々の栄誉に輝いている。2007年にメセナ大賞、2010年に現代詩花椿賞による詩の支援と振興で「ことばの花賞」、2014年に椿会の開催と資生堂アートハウスの運営でメセナアワード、そして**2023年にはメセナアワード特別賞「文化庁長官賞」**を受賞した資生堂ギャラリー12。
これらの受賞理由として評価されたのは、創業者精神を受け継ぎながら時代の変化を捉え、アートによる社会的価値創造にチャレンジしてきた実績と、経営の中に文化を取り込み、社内の美意識向上と社会への文化普及を両立させた点だった資生堂ギャラリー12。
第4の経営資産としての位置づけ
資生堂の企業文化2においてギャラリー運営は、**「第4の経営資産」**として位置づけられている。資生堂では「創業以来、組織内に蓄積してきた企業活動の知的・感性的成果」を『企業文化』と定義し、「ヒト・モノ・カネに次ぐ第4の経営資産」と位置づけている資生堂のイメージアップ13。
1990年に創設された資生堂の企業文化部は、美術展の開催やアーティストの支援を通じて、社員一人ひとりの美への感性を鍛え、美意識を高めることにより社会を豊かにすることを目指しているcorp.shiseido.com2。
5. 銀座の文化的景観を形成する存在
地域文化への貢献
現在の資生堂ギャラリーは、銀座という土地の文化的価値向上にも大きく貢献している。他の企業ギャラリーとも連携し銀座の街の活性化を推進しThis is MECENAT14、国内外の美術愛好家が集まる文化的ハブとしての役割を担っている。
無料で質の高い現代美術に触れられる機会を提供することで、アートの裾野拡大にも大きく寄与している資生堂ギャラリー15。この取り組みは、美術館等の運営を通じて、地域の活性化と文化の醸成に貢献したとして高く評価されているメセナアワード200716。
椿会の伝統継承
第八次椿会「ツバキカイ8 このあたらしい世界」(2023-2024年)では、杉戸洋、中村竜治、Nerhol、ミヤギフトシ、宮永愛子、目[mé]という6組の現代美術家による共同展示を実現したPR TIMES17。
「椿会」は、第二次世界大戦で一時中断していた資生堂ギャラリーの活動を、1947年に再開するにあたり誕生したグループ展だPR TIMES17。アートが人々に希望を与え、戦後復興期に始まったこの伝統を現代に蘇らせ、希望と創造の場としてのギャラリーの原点を確認した。
6. 最新の展覧会動向と話題性
2024年の注目展覧会
2024年は多数の話題性のある展覧会が開催された。「渡辺志桜里 宿/Syuku」展(2024年11月6日から12月26日まで)では、水槽やプランターなどをホースでつなぎ、水やバクテリアを循環させる独特のインスタレーションが注目を集めた資生堂ギャラリー18。
また、資生堂クリエイティブ展覧会「美を疑え」展が2025年1月11日から1月26日まで開催予定でp-prom.com19、美の概念そのものを問い直す挑戦的な企画として注目されている。
国際的な評価と連携
資生堂ギャラリーはART WEEK TOKYOなどの国際的なアートイベントでも重要な役割を果たしているART WEEK TOKYO20。海外の作家からも注目を集める5mを超える天井高をもつ銀座地区で最大級の空間は、様々な表現を可能にする場として機能している資生堂ギャラリー1。
7. 美意識の未来を創造する展望
継続的な革新への姿勢
資生堂ギャラリーの真の魅力は、過去の蓄積に甘んじることなく、常に未来への挑戦を続けている点にある。前衛性と純粋性を兼ね備えた同時代の表現を積極的に紹介し、観客の美的感受性を刺激し続けている資生堂ギャラリー1。
現代美術のレトリックを超えたものを、どこまで表現できるかが今後の課題となるが、このような強度は現在の日本の美術界が最も必要とするものとして位置づけられている資生堂ギャラリー21。
社会への価値創造
美術館等の運営を通じて、地域の活性化と文化の醸成に貢献してきた実績メセナアワード200716は、単なる企業イメージ向上を超えた、美意識を通じて社会を豊かにする本質的な取り組みとして評価されている。
資生堂ギャラリーは今後も、**「新しい美の発見と創造」**という創設以来の理念のもと資生堂ギャラリー1、日本の芸術文化の振興に寄与し続けていくだろう。
おわりに:美の実験室としての永続的価値
銀座8丁目の地下に広がる白い空間は、単なる展示場ではない。そこは**日本の美意識の進化を見守り、新たな表現の可能性を世に問い続ける「美の実験室」**なのである。創設から100年を経てなお革新的であり続ける資生堂ギャラリーの軌跡は、時代を映し、時代を創る場として今後も続いていく。
アクセス情報
- 住所:東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
- 開館時間:平日11:00~19:00、日・祝11:00~18:00
- 休館日:毎週月曜(祝日も休館)
- 入場料:無料
- TEL:03-3572-3901
読んでいただいてありがとうございました
それでは引き続き頑張っていきましょう。
ではまた
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