コウノです。
読んで後悔した本ってある?それはどれで、なぜ?
読書体験とは、常に「あらかじめ約束された感動」をもたらしてくれるわけではありません。ときには、本を閉じ、静かにため息をつき、「なぜ自分はこの貴重な時間をこの一冊に投じてしまったのだろう」と深い徒労感に苛まれることがあります。
しかし、真の意味で「読んで後悔した本」とは、単に「つまらなかった本」や「文章が下手だった本」のことではありません。退屈な本なら途中で投げ出せば済みますし、駄作であれば失われるのは高々千数百円と数時間の消費に過ぎないからです。
本当の意味で「読んで後悔した」と心の底から思わされるのは、「あまりにも完成度が高く、読者の世界観や倫理観を不可逆的に破壊してしまう本」です。
私が人生で最も読んで後悔し、同時に最も忘れられなくなった一冊。それは、イスラエル出身の心理学者であり社会学者であるオルナ・ドナース(Orna Donath)が著した社会学的調査書『母親になって後悔している(Regretting Motherhood)』です。
この記事では、私がなぜこの本を手に取り、どのように心を抉られ、そしてなぜ「読まなければよかった」と後悔するに至ったのか。その理由を徹底的に解剖していきます。
1. その本との出会いと、甘く浅はかな期待
私が『母親になって後悔している』というショッキングなタイトルの本を手にしたのは、ある種の知的好奇心と、どこか他人事のような興味からでした。
私たちは幼少期から、メディアや文学、さらには日常の道徳的言説を通じて、「母性」というものを神聖化された絶対的な愛として教え込まれてきます。「我が子を産んだ瞬間、すべての苦労は吹き飛ぶ」「子どもは何物にも代えがたい存在である」「母とは無償の愛を注ぐ存在である」——こうした言説は、社会の基盤を支える自明の真理として提示されています。
だからこそ、「母親になったことを後悔している」という命題は、強い禁忌(タブー)の香りを放っていました。
当時の私は、「そうは言っても、一時的な育児ノイローゼの記録や、社会的なサポート不足に対する制度的な批判、あるいは一部の特異な症例を集めたノンフィクションなのだろう」と高を括っていたのです。つまり、「過酷な環境下における人間模様のドキュメンタリー」として、安全圏から高見の見物決め込むような、浅はかな心持ちでページをめくりました。
しかし、その予測は一ページ目から無残に打ち砕かれることになります。
2. 破壊的な真実:子どもを愛している、それでも「母になったこと」を後悔している
本書は、社会学者である著者が、23人のイスラエル女性(20代から70代まで、多様な社会的・経済的背景を持つ女性たち)にインタビューを行った定性的研究に基づいています。
読み始めてすぐに私を襲ったのは、これまで抱いていたぬるま湯のような認識を根底から崩す、強烈な冷水でした。
本書に登場する女性たちが口を揃えて断言するのは、決定的な「二律背反(アンビバレンス)」です。
読んでいただいてありがとうございました
それでは引き続き頑張っていきましょう。
ではまた
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